田舎での子育ての実態-田舎育ち、今も半分コミュニティに属す立場からの意見。

2019/07/18

こんにちは。イソノです。
「田舎暮らし」や「田舎での子育て」に憧れている人もいると聞きます。
実は、私は「田舎暮らし」「田舎での子育て」を客観的に語れる経歴です。
以下の通りです。

  • 1981年、田舎に生まれる(田園が広がる村。家の裏手には山。人口約8,000人)
  • 村内の同級生は約140人。近所(半径500m)の同級生は3人。
  • 小中学校は村立で、ずっと同じメンバー。
  • 高校は原付で約30分ほどのところへ。(家から電車の駅が遠いので原付通学OK)
  • 高校卒業後、大学進学で東京へ。
  • 卒業後、数年東京で働き、Uターン。
  • 地元の県庁所在地の市で就職。(実家から一時間かけ通勤)
  • 数年後、その県庁所在地へ引越し(一人暮らし)
  • 結婚し、そのまま県庁所在地で暮らす。
  • ただ、地元の繋がりはあり、田舎特有の消防団等に属す。その他各種地元イベントへの参加。(地元で暮らす同級生、先輩、後輩の子育ての様子は良く分かる)

いかがでしょうか?田舎で生まれ育ち、外の世界を見て、今も半分コミュニティに属しているかたちです。
子供の頃から知っている人たちと、今も関わっています。
この記事では、そんな立場の私から見た田舎での生活について書いていきたいと思います。

結論的なことをいうと、「田舎暮らし」や「田舎での子育て」というものは、穏やかで美しいものとは限りません。都会の暮らしよりもシビアなんじゃないかと思うことも多々あります。
なぜなら、(様々なところで言われていることですが)人間関係・コミュニティの関係が濃いからです。ここが田舎暮らしの最大のポイントだと思います。
それは、田舎の自然の美しさ、伝統文化の厳かさ慎ましさといった利点を遥かに上回るものです。
私の田舎での生活経験、田舎から離れてみての客観的な立場から、「田舎暮らし」や「田舎での子育て」についての実態を書いていきたいと思います。
この記事が田舎暮らし・田舎での子育てを考えている人の参考になると嬉しいです。

3つの観点から書いていきます。

  1. 自分の子供時代の目線での「田舎暮らし」
  2. 地元で暮らす同級生・先輩・後輩たちの田舎暮らし/子育て
  3. 私が現在住む地域での子育て、田舎との比較

では、見て行きましょう。

1.自分の子供時代の目線での「田舎暮らし」

上の方でも書きましたが、私は田舎で生まれ育ちました。
そんな自分が子供の時どの様に過ごしたか?どんな風に思っていたか?を振り返ってみます。
そのことで、あなたが田舎で育てることになるであろう、あなたの子供の体験・気持ちが多少なりとも想像できるんじゃないかと思います。

私が生まれ育ったのは、田んぼが広がる本当にのどかなところでした。
これぞ「日本の田舎」といっても過言ではないようなところです。「まんが日本昔ばなし」の世界観と実際の暮らしにそれほど違和感がない感じです。
私の住んでいた家は、築150年以上という古い農家の家でした。天井に太い梁があるような家です。囲炉裏もありました。そして、小学校三年生くらいまで、トイレは汲み取り式でした。(いわゆるボットン便所です)
夏になれば蛍もいるし、カブトムシも取れるような地域です。
とはいえ、原住民のような暮らしではなく、車もあるし、テレビもあるし、電話もあるし、車で15分ほどのところには多少発展した町があり、一通りのものはそろいました。
また、当時の遊びは、もちろん外でも遊びましたが、ファミコンの方に夢中になっていました。
近所の子供たちと集まってはファミコン。ファミコンが一段落すると外で遊ぶ、という感じでした。
そして、ビックリマンシールなんかも流行りました。
こういった部分は、都会の子供とあんまり変わらないんじゃないかなと思います。

習い事は、そろばんと習字でした。
中学受験なんかは縁のない地域なので、小学生時代は勉強なんてほとんどしません。
そういった意味では、「のびのび」といえるのかもしれませんね。

では、そんな田舎で育った子供(私)がどのように感じていたか?
親の目線としては気になるところかもしれませんが、実のところ、過ごしている環境に対して好きも嫌いも無く、何も感じていませんでした。「田舎だ」ということすら認識していませんでした。比較するものが無く、それが当たり前だったからです。

しかし、中学生、高校生になってくると、都会の情報が入ってくるので、自分の住んでいるところと比較できるようになります。すると、自分の住んでいるところが田舎なんだというのが分かるようになります。
田舎というのは変化があまりないので、(特に思春期の子供にとっては)閉塞感を感じるようになります。
私は、「地元は嫌いではないけれども、いつかここを出よう」と思うようになりました。
まあ、ここまで成長すると「田舎での子育て」ということからはちょっと外れるのかもしれませんが。
ちなみに、高校を卒業して地元に就職する同級生も半数くらいいたので、閉塞感を感じるかどうかは人によるのかもしれません。
当時、「白線流し」というドラマがありましたが、かなり共感できるものがありました。

そして、私は一年浪人の末、東京の私立大学へ進学することになります。
(親にはとても感謝しています)

2.地元で暮らす同級生・先輩・後輩たちの田舎暮らし/子育て

地元で暮らしている人たちの子育てはどうでしょうか?
私が知っている30代前半~40代半ばくらいまでのいわゆる「子育て世代」の人たち、結構地元に残っています。
一旦地元を離れて戻った人、生まれてからずっと実家暮らしの人を合わせ、6割くらいは残っていると思います。
その人たちの8割くらいは結婚して子供がいます。しかも同居です。
同居で嫁に来てくれるのはすごいな…とは思いますが、まあ余計なお世話ですね。

で、地元に残った人たちの生活はどうか?子育てはどうか?についてです。
子育てについては、田舎も都会もあまり変わりないんじゃないかと思います。
保育園や小学校の行事、休みの日にはどこかへ連れていったり。そんなことを先輩や後輩から良く聞きます。(もちろん、物理的に都会的なスポット・最先端のものを見せるというのは難しいですが)
子供たちも地域の行事や学校の行事、遊びなど私の子供の時とそんなに変わらないように映ります。子供たちは、私同様に田舎かどうかというのはあまり気にしていない(分かっていない)んだと思います。
その環境の中で、楽しいことを見つける、という感じだと思います。

田舎と都会で決定的に違うのは大人の方だと思います。
それは、地域の繋がりの濃さにあります。
元々田舎というのは、農業での仕事面・冠婚葬祭などお互いに助け合って生活してきたという背景があります。近所に親戚がいることも多々あります。
その流れだと思いますが、とにかく地域の関係性は濃いものがあります。
様々な集まりがあり、それに参加することはほぼ強制です。
消防団、青年団、婦人部、祭り、運動会、子供関係の役員などなど…。

私は地元に住んでいませんが、地元の消防団に入っています。今住んでいるところからの移動も含め、それなりに時間が取られます。
田舎に住んだことのない人は「そんなものやらなければいいじゃないか」と思うかもしれませんが、そのコミュニティに属す以上、許されることではありません。
Uターンしてきて、一時期実家に住んでいたときに勧誘され、ほぼ強制的に入団です。
私は消防団だけですが、地元で暮らし、子供もいる人たちは役割をフルでこなすことになります。各種活動が重なる時期は、一カ月間週末の予定が全て埋まってしまう、ということもあります。
もちろん、やらないことも可能ですが「村八分」的な感じになります。田舎で快適に過ごす上ではコミュニティの仕事は欠かせないのです。

都会から移住しようとする場合、この「コミュニティに属す」という意識が無いとうまくいかないと思います。
田舎の暮らしは、「豊かな自然のなかでゆったり」というのはある種幻想です。
個人的な部分を犠牲にし、ある程度の責任を果たす必要があるのです。
男性は男性の役割、女性は女性の役割があります。
男性は主に力仕事・行事の実行・地域の人たちと酒を飲むというのが役割です。
女性はそのサポート、特に料理面・子供の世話が役割となります。
時代錯誤的なところはありますが、こういった「伝統」は結構残っています。

そして、悪く言うと「相互監視」のようなところがあります。
「〇時頃出かけて行ったね。朝早いね。」
「車が無かったけどどこか行ってた?」
「昨日〇〇にいた?」

などなど。
コミュニティが小さく距離感が近いので、お互いの暮らしが自然と目に入ってくるような関係性です。
そして、皆これを当然のこととして受け入れています。(好き嫌いはあると思いますが)
ちなみに、私は「昨日車なかったな」とか言われてもは特に嫌ではありません 笑

こういう「濃い関係」が好きな人は田舎でやっていけると思います。
それが無理な人は‥‥正直、田舎での暮らしは諦めた方が良いと思います。
特に、外部から移住してくる場合は、コミュニティに溶け込むための努力が相当必要となります。子供の頃からがっちり出来上がってきた人間関係の中に入っていくことになりますので・・。

3.私が現在住む地域での子育て、田舎(地元)との比較

現在、私の住む地域は某県庁所在地です。
中心部からほど近い、住宅街の戸建て(賃貸)に住んでいます。
地元との違いで最も感じるのは、コミュニティの結びつきの弱さです。
今の家に住んで約一年ですが、地域の活動的なものはほぼありません。自治会はありますが、年に一回程度会合に出れば終わりです。
仮に何か役員になったとしても、地元とは比べ物にならないほど軽い負担のようです。

子育てについては、子供が3歳・1歳と小さいこともありますが、家と保育園だけで完結しています。小学生になってくると地域の子供たちとも遊ぶようになると思いますが、現時点ではどうなるか分かりません。
ただ、こちらも地元に比べると地域とのつながりは圧倒的に少ないと思われます。

ちなみに、「田舎」という点では今住んでいるところも東京などの大都市に比べると田舎です。大学へ進学する場合、地元に選択肢が少ないので東京への進学というのは十分あります。
となると、学費・仕送りという金銭面が心配になってきますが、それはまあこの記事での本題ではないので割愛します。

まとめ

田舎で生まれ育ち、現在も半分属している私の立場から、田舎で住むこと田舎で子育てすることについて書いてきました。

田舎で暮らすことの最大のポイントは「コミュニティの関係性の濃さ」です。
これにあなたが適応できるかどうかにかかってきます。
そういった付き合いが嫌いではなければ、結構暮らしやすいかもしれません。
しかし、もし苦手なら、田舎暮らしは絶対におすすめできません。

田舎の自然の豊かさ、(イメージ的に)のどかさというのは意外と表面的な部分です。
暮らす上では、人間関係、地域のしきたりといったことの方がはるかに気にするべき点です。

ちなみに、子供はその環境が当たり前と思って育ちます。
田舎だから優しい、のびのびとした子供に育つわけではありません。
都会にも様々なタイプの子供がいるように、田舎にも様々なタイプの子供がいます。

田舎で暮らすポイントとしては、あくまでも親にその適正があるか?地元の人たちと仲良くやっていく覚悟があるか?ということです。

私個人の意見としては、田舎暮らしをするなら、
・外部からの流入が多少でもある地域
・人口規模が小さすぎない地域
のどちらかにすべきだと思います。

あまりにも閉じられた田舎というのは、都会暮らしとの感覚があまりにも離れている可能性があります。

田舎暮らしについて結構ネガティブな感じになりましたが、田舎の自然、細々としかし確かに続いてきた伝統や文化、暮らしというのは確かに美しく魅力的な部分があります。
それは、「となりトトロ」で描かれるような田舎の雰囲気に近いものです。
しかし、何事にも良い面もあれば悪い面もある。当たり前のことですが、そのことをしっかりと覚悟して田舎での生活を検討してほしいです。

この記事が田舎暮らし・子育てをしようと思っている人の参考になるなら嬉しいです。

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